

| 物品市場アクセス (農業、繊維・衣料品、工業) |
物品の貿易に関して、関税の撤廃や削減の方法 | |
|---|---|---|
| 原産地規則 | 関税減免の対象となる「締約国の原産品」として認められる基準 | |
| 貿易円滑化 | 貿易規則の透明性の向上、手続きの簡素化 | |
| SPS(衛生植物検疫) | 食品の安全確保、動植物が病気にならないための措置 | |
| TBT(貿易の技術的障害) | 製品の特質や生産工程などの「規格」が、貿易の障害にならないルール | |
| 貿易救済 | 輸入の急増に対する緊急措置(セーフガード)について | |
| 政府調達 | 中央政府や地方政府などによる物品・サービスの調達に関するルール | |
| 知的財産 | 知的財産の保護、模倣品や海賊版の取り締まり | |
| 競争政策 | 貿易や投資の自由化で得られる利益をカルテルなどから守る | |
| 電子商取引 | 電子商取引の環境や、ルールの整備 | |
| サービス | 越境サービス | サービス貿易に関するルール |
| 商用関係者の移動 | ビジネスに従事する人の入国や滞在などの手続き | |
| 金融サービス | 金融サービスにおけるルール | |
| 電気通信サービス | 主要な電気通信サービス提供者の義務 | |
| 投資 | 内外投資家の無差別原則、投資に関する紛争解決の手続き | |
| 環境 | 貿易や投資の促進のために、環境基準を緩和しないこと | |
| 労働 | 貿易や投資の促進のために、労働基準で緩和すべきでないこと | |
| 制度的事項 | 協定の運用などについて協議する「合同委員会」の設置や権限 | |
| 紛争解決 | 解釈の不一致による紛争解決の手続き | |
| 協力 | 協定を履行するための技術支援や人材育成 | |
| 分野横断的事項 | 複数の分野にまたがる規制や規則が、障害にならないための規定 | |
※TPP協定交渉には、上記「物品市場アクセス」が農業、繊維・衣料品、工業に分かれ、これに特定の分野を扱わない「主席交渉官会議」を加えた24の作業部会があります。
○農作物価格
・国産米
農水省の試算では、相対価格が現状より39%下がるとしています。小売価格は、現在の1キロ328円から200円(30キロ6,000円)に。
九州大学大学院の伊藤正一教授の試算では、関税撤廃により海外産米が最大で日本の年間コメ消費量の半分に相当する400万トン入ってくるとしています。現在60㎏あたり15,000円程度の国産米に対し、関税がなくなると米国産「コシヒカリ」が7千円前後、同国産の「カルローズ」が5千円程度で入ってくる可能性があるとのことです。(日本農業新聞24年2月29日記事より)
○生産量・額の影響や、農業・畜産業の打撃について農水省の試算がでていますので、下表をご覧ください。
・なお、果樹の生産額の減少は、下表試算の7倍にあたる1,400億円にのぼるという試算も、東京大学大学院 鈴木宣弘教授らの研究グループにより出されています。(24年5月12日日本農業新聞記事より)
| 農水省 国境措置撤廃による農産物生産等への影響試算について(品目別) | |||
|---|---|---|---|
| 品目 | 生産量減少率(%) | 生産額減少額(百億円) | 今回の試算の考え方 |
| 米 | 90 | 197 | 新潟産コシヒカリ、有機米等のこだわり米等を除いて置き換わる。 |
| 小麦 | 99 | 8 | 国内産小麦100%をセールスポイントとした小麦粉用小麦を除いて置き換わる。 |
| 大麦 | 79 | 2 | 主食用(押麦)及び味噌用(裸麦)は残り、ビール用、焼酎用、麦茶用等は置き換わる。 |
| いんげん | 23 | 0.3 | 高級和菓子用、煮豆用等を除いて置き換わる。 |
| 小豆 | 71 | 2 | 高級和菓子用を除いて置き換わる。 |
| 落花生 | 40 | 1 | 殻付き(莢入り)は残り、むきみは置き換わる。 |
| 甘味資源作物 | 100 | 15 | 品質格差がなく、すべて置き換わる。 |
| でん粉原料作物 | 100 | 2 | 品質格差がなく、すべて置き換わる。 |
| こんにゃくいも | 90 | 3 | 生ずりこんにゃくは残り、こんにゃく精粉から製造されるこんにゃくは置き換わる。 |
| 茶 | 25 | 31 | 番茶及び2番茶は残り、3番茶、4番茶及び秋冬番茶は置き換わる。 |
| 加工用トマト | 100 | 3 | ケチャップ等のトマト加工品は品質格差がなく、すべて置き換わる。 |
| かんきつ類 | 9 | 1 | ストレート果汁は残り、濃縮果汁及び缶詰は置き換わる。 |
| りんご | 9 | 1 | ストレート果汁は残り、濃縮果汁は置き換わる。 |
| パインアップル | 80 | 0.1 | 缶詰は置き換わる。これに伴って缶詰用と同じ株から生産される生果用が減少する。 |
| 牛乳乳製品 | 56 | 45 | 乳製品では、鮮度が重視される生クリーム等を除いて置き換わる。飲用乳では、業務用牛乳等を中心に2割が置き換わる。 |
| 牛肉 | 75 | 45 | 4等級及び5等級は残り、3等級以下は置き換わる。 |
| 豚肉 | 70 | 46 | 銘柄豚は残り、その他は置き換わる。 |
| 鶏肉 | 20 | 19 | 業務・加工用の1/2が置き換わる。 |
| 鶏卵 | 17.5 | 15 | 業務・加工用のうち弁当等用と加工用の1/2が 置き換わる。 |
| 合計 | 4兆1千億円(注) | (注) 国産農産物を原料とする1次加工品(小麦粉等)の生産減少額 | |
| 農水省が試算するTPP参加の場合の国内農業・畜産業の打撃 | |||
|---|---|---|---|
| 品目 | 生産量減少率 | 生産額減少額 | 備考 |
| 米 | 90%減 | 1兆9700億円 | 国産米の1/4の価格の外国米が流入 |
| 小麦 | 99%減 | 800億円 | 外国産は価格が1/2程度 |
| 砂糖 | 100%減 | 1500億円 | 外国産は価格が1/3程度 |
| 牛乳・乳製品 | 56%減 | 4500億円 | バターなど外国産は価格が1/3程度 |
| 牛肉 | 75%減 | 5400億円 | 外国産は価格が1/3程度 |
| 豚肉 | 70%減 | 4600億円 | ブランド豚以外は輸入品に置き換わる |
| 鶏肉 | 20%減 |
1900億円 | 業務用、加工用の半分が輸入品へ |
| 鶏卵 | 18%減 |
1500億円 | 業務用、加工用の半分が輸入品へ |
| でんぷん | 100%減 |
200億円 | すべて輸入品へ |
| こんにゃく | 90%減 |
300億円 | 一部ブランドこんにゃくのみ残る |
| 茶 | 25%減 |
300億円 |
高品質なブランド茶のみ残る |
| 加工用トマト | 100%減 |
300億円 |
すべて輸入品へ |
| かんきつ類 | 9%減 |
100億円 |
果実・缶詰は輸入品へ |
| リンゴ | 9%減 |
100億円 |
果汁は輸入品に置き換わる |
| その他 |
|
500億円 | 大豆、小豆、落花生など |
| 合計 |
|
4兆1000億円 | |
| ※現在日本が外国産に高い関税をかけている主な品目/コメ778%、砂糖328%、バター360%、小麦252%、大麦256%、脱脂粉乳218%、小豆403% | |||
○遺伝子組み換え作物(GM作物)
現在、日本では、食品衛生法及びJAS法により、「遺伝子組換え食品」で ある場合はその旨を表示することが義務付けられています。しかし、TPPに参加すると、この義務がなくなる可能性が高いといわれています。
・アメリカでは、安全性が確認されているという理由から、遺伝子組み換え表示をする必要はありません。そのため、アメリカとFTAを結ぶニュージーランド政府は、アメリカ企業から「表示の義務を強制するのは不当だ」と訴えられています。
・米韓FTAでは、アメリカで認められたGM作物は、韓国の審査なしで輸出できることに。
→TPPでも、アメリカから同じ要求がされる可能性があります。
○BSE(牛海綿上脳症)対策
現在、日本への輸入が認められるアメリカ産牛肉は、生後二十か月齢以下のものだけとなっております。BSEは高齢のウシほど発生率が上がるため、二十か月齢以下なら、発生の確率が低いと考えられているからです。
→しかし、日本政府は現在、輸入を認める米国産牛肉を生後三十か月齢まで引き上げる案をまとめている最中です。
→24年4月新たに米国でBSEの感染牛が確認されたにも関わらず、政府はこの議論に「何ら影響はない」(藤村官房長官)として解決を図ろうとしています。
○その他
残留農薬基準の引き下げ、収穫後の農薬使用許可、新たな食品添加物使用の緩和などの危険性もあります。
米国の民間保険会社は、保険外で高額に診療できる範囲の拡大を狙っています。公的医療保険制度の廃止を直接要望してはいませんが、混合診療が取り上げられ、医薬品の薬価についての要望があります。
混合医療とは、公的な保険診療部分に保険外の自由診療部分を加えることで、高度な医療サービスを受けられるようにしようというものです。自由診療部分は全額個人負担なので、自由診療部分を増やしてしまうと、私達が直接払う医療費が増えてしまうことを意味しています。
また、もう一つTPPで心配されているのが、株式会社による病院経営を認めさせられることです。現在、医療について法律で株式会社などの営利を目的とする企業による経営を禁止しているのは、株式会社は株主のために運営されるので、患者の利益と株主への配当を優先するからです。効率が悪いという理由で、救急や産婦人科、小児科、精神科といった分野は切り捨てられていく可能性があります。
株式会社が病院経営を始めたら、より利益を求めて、混合診療の拡大を政府に求めていき、一方でもうからない公的な保険診療を軽視するようになるでしょう。患者にも、病院にとって利益をだせる自由診療をすすめる、お金のない患者はまともに医療を受けられなくなります。まるで、アメリカ社会のように。結果として保険料を納めようとする人は減ってしまい、「国民医療保険制度」は成り立たなくなってしまうでしょう。
雇用に対してもTPPでは原則自由化されることが規定されているため、労働者にとってさらに厳しい雇用状況になると懸念されます。
・外国からの低賃金労働者の流入により、国内雇用が失われ、失業者が増えると予想されます。
・安い製品の流入でデフレが悪化し、賃金の低下、失業率の増加につながります。
・市町村の公共事業や小規模な案件でも、地元の中小企業が海外企業との厳しい競争を強いられ、地域雇用・地域経済が衰退する恐れがあります。
・医師や看護師等外国有資格者の参入への懸念もあります。
・TPP参加で得をするのは、輸出に関わる一部の多国籍企業だけ。ひと握りの勝者と大多数の敗者を生み出します。多くの産業・企業は淘汰され、地域間格差も助長されます。
・関税撤廃で輸出企業の利益が増えても、雇用より海外投資などに回される可能性大。国民生活には反映されません。そもそも日米間の関税は自動車で2.5%程度、これを撤廃しても輸出が伸びるか疑問です。